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最高裁判所第二小法廷 昭和32年(オ)169号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人三宅清の上告理由第一点(三)(四)について。

原判決所掲の証拠によれば、所論の点に関する原審の認定を肯認できる。所論は原審が適法になした事実認定を非難するに帰するから、採用できない。

同上告理由第一点(五)について。

本件の各手形が、上告人が振出し、訴外有限会社山本商店および訴外山本貞秋が逐次裏書して被上告人に差入れた約束手形の書換手形であることその他原判決認定の事情に徴すれば、被上告人が本件手形の取得に際し所論の措置をとらなかつたとしても、これをもつて直ちに重大な過失があるとはいえないから、原判決に所論の違法がなく、論旨は採用できない。

同上告理由第二点について。

訴外有限会社山本材木店が本件約束手形を同会社の代表者訴外山本貞秋に裏書譲渡するについて社員総会の認許がなく訴外山本貞秋が手形上の権利を取得しなくても、被上告人が訴外山本貞秋より本件手形の裏書譲渡を受けるにつき訴外山本貞秋が手形上の権利を有しないことを知らずかつこれを知らないことについて重大な過失がないときは、被上告人は本件手形の振出人である上告人に対する手形上の権利を取得することは、手形法第一六条第二項により明らかであつて、所掲の判例は本件に適切でないから、論旨は採用できない。

同上原理由第三点について。

原判決によれば、訴外山本和彦が訴外有限会社山本商店の代表社員山本貞秋を代理するのみならず訴外山本貞秋個人を代理する代理権をも与えられた旨を判示したものと解せられなくはないから、原判決に所論の違法がなく、論旨は採用できない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 藤田八郎 裁判官 池田克 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一 裁判官 山田作之助)

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